世界的なカーボン排出量削減の必要性から、多くの産業で電動駆動への投資が積極的に行われています。効率の向上、可動部品の削減、ゼロ・カーボン発電の活用が可能な電動パワートレインは、将来に向けて大きなアドバンテージとなります。

EV の設計における大きな課題の1つは、通常はトランスミッションノイズを 隠してしまう内燃エンジンがなくなることです。CAEソフトウェアを活用してノイズを予測することで、初期段階から問題を未然に防いだり、費用のかかる試作や試験を行わなくても問題を解決できるといった大きなメリットが得られます。

MASTA は 20 年以上にわたり、エンジニアのパワートレイン設計をより容易にし てきました。今回、音響解析も統合することで、MASTAはNVH解析と最適化プロセスをさらに容易にします。

MASTAにおけるサウンドインテンシティの表示

MASTAのNVH解析ツール

SMTは、NVHの技術革新において確固たる実績があり、変調に対するAdvanced Time Stepping Analysis、NVH Operating Maps、電動モーター解析、ギヤのうなり音の励起を求めるAdvanced LTCAなどの機能を提供しています。

これらの手法は、従来の一般的なCAEツールを用いた手法に比べて、エンジニアの工数を大幅に削減できる可能性を持っています。

SMTはまた、MASTAのマルチボディダイナミクスモジュールであるDRIVAで、スプラインランブルや ギヤラトルの予測/解決するための手法のパイオニアでもあります。

  • NVHオペレーティングマップにより、MASTAはモーターの全速度範囲にわたる個々のトルクを検討することが可能です。システムの剛性と動的挙動はモータから加わるトルクに敏感です。
  • ATSAMは、プラネタリーの回転やギアブランクの穴などの影響に起因する伝達経路の変化を考慮します。システムのモードをベースにしたタイムステッピングアプローチを採用しており、マルチボディダイナミクスのフル解析よりもはるかに高速な解析が可能です。 詳細はこちら
  • 電動モータ解析は、電動モータの設計・解析とトランスミッション解析を1つのインターフェイスで統合した初めての製品です。
  • MASTAのスプラインランブル解析は、既存のMASTAモデルで使える最先端のツールを用いて動的挙動を予測します。 詳細はこちら
  • アドバンスドLTCAは、フルFEAモデルと比較検証済みの高精度なギヤ歯面接触解析であり、さらに桁違いの高速化を実現しています。 詳細はこちら

MASTA は、自動車パワートレーン分野の多くのエンジニアにとって、NVH 解析に最適なツールであり、電動パワートレーンの NVH 性能を迅速かつ効率的に解析し、最適化する機能を提供しています。MASTA 14は、この能力を音響解析にまで拡張しました。

Dr. Tom Harvey, Software Technical Manager

MASTA 14 logo.

“MASTA 14ではギヤや 電動モータの加振から任意の位置の マイクの音圧まですべてを 1つのツールで計算することができます。”

MASTAの統合されたフル音響解析

これまでのMASTAでは、音響解析結果を取得する2つの方法がありました:

  1. 等価放射パワー (ERP): この高速な方法は、ケースの表面速度に基づいてサウンドパワーを推定します。ケース全体に対して1つの数値を算出し、計算が非常に迅速であるため、最適化目標として有用です。この方法は、フル音響解析を補完し、フル音響解析を使用して詳細な影響を確認する前に、迅速な反復計算に活用できます。
  2. 外部音響解析ソフトウェアへのエクスポート:表面速度や動的境界条件をいくつかの一般的なフォーマットでエクスポートする機能も備えています。これらのデータは、外部ソフトウェアでのさらなる分析に活用可能です。この機能は引き続きサポートしており、継続的に改善を進めています。

MASTA14のフル音響解析では、MASTA内での作業を全て行うか、Ansys Mechanicaなどツールチェーン内の他の解析ソフトウェアにエクスポートするかなど、柔軟な選択肢が用意されています。

ただし、業界ではより正確なアプローチが求められており、特定の位置における詳細なノイズ応答を、さまざまなテスト環境と相関させる必要があります。これにより、ドライバー、乗客、歩行者に対するパワートレインのノイスの分布を、全体像として把握することが可能になります。

SMTは、設定プロセスを大幅に自動化することで、周波数領域解析から音響解析までのステップを可能な限り容易に実施できるようにしました。

マイクの位置はマニュアルで指定するか、ISO 3745規格に従って指定できます。その後、音響設定モードに切り替え、ハウジングFEメッシュの穴を自動的に埋め込みます。音響結果のサーフェスは容易に作成でき、FE設定のすべての変更に対して維持されるため、信頼性が高く直接的な比較が可能です。

この設定を簡単にするために、現在のダイナミックレスポンスチャートの周波数オプションとハーモニックオプションを利用して、音響解析がハーモニックレスポンスモードに統合されています。

ISO 3745 マイク配列

MASTAは、音響メッシュを必要としない広帯域高速多重極境界要素法(Wideband Fast Multipole Boundary Element Method)を採用しています。この手法では、既存のFEメッシュに境界条件を適用し、従来の手法の精度を維持しながら設定時間を短縮します。

簡単で使いやすいインターフェースとして定評のあるMASTAでは、解析後に結果の表示を迅速に行えるため、結果の切り替え時に長い計算を繰り返す必要はありません。

音響解析により、MASTAのフル電動パワートレイン設計・解析・最適化機能がさらに拡張され、パワートレイン設計の革新に対するSMTの取り組みが明確に示されました。

お読みいただきありがとうございました

ここでは、MASTA 14の新しい音響機能について紹介しました。さらに詳しい情報やデモに興味がある場合は、ぜひお問い合わせください。

MASTA 14では、電動パワートレインを初めから終わりまで設計することが可能です。

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